「おおっ!」
 「動いてるよー」
 「……何これ?」
 編集部のTFT液晶ディスプレイのパソコンで『HYDLIDE』のα版を動かしたとき、周囲の反応は様々だった。ずっと編集に携わっている者は懐かしがり、画面をオリジナル版に切り替えて「これだよ、これ!」と悦に入っている。その周りで、きょとんとして画面を見ている者もいる。そうか、『HYDLIDE』を知らない人も多いんだろうな……端でその様子を見ながら、そんな風に思った一時だった。
 『HYDLIDE』といえば、T&Eソフトの超名作アクションRPGである。当時は8ビット機が隆盛を極め、各社ともユニークなコンセプトのマシンを発売し、混沌としながらも、技術革新とともに業界は活気づきつつあった。当時、パソコンは、物価の兼ね合いなども考えると、現在よりはるかに高価な品物だった。今ならちょっと気合いを入れれば、音楽と絵にMac、ゲームとインターネットにWindows、草の根通信にPC-98と、個人で数台のマシンを揃えることも不可能ではないが(本当か?)、当時は複数のパソコンを所有するというのは非現実的。その中で、『HYDLIDE』は、PC-8801、PC-8801mkIISR、PC-9801、PC-6001mkII、PC-6001mkIISR/PC-6601SR、FM-7、MSX、MSX2、X1、ファミリーコンピュータと、実に11機種で動作した。それだけ各機種のユーザーが、このゲームが自分の愛機で遊べることを願った証拠である。
 ゲームは画面切り替え型のトップビュー・アクションRPGで、ATTACKとDEFENDを切り替えて、敵に体当たりして経験値を稼ぎ、アイテムを集め、最終目的であるフェアリーを救出するというものだ。マップは地上の他に地下洞窟もあり、水路を進んだり、砂漠を歩いたりとバラエティに富んでいる。
 『HYDLIDE』が売れたのは何故か? それは、絶妙なゲーム・バランスではないだろうか。うろ覚えだと確実に迷うが、マッピングはそれほど難しくない。キーポイント的に強敵はいるが、経験値を上げていく途中で操作はマスターできる。目新しいという点もあっただろうが、ユーザーに解く気力を与えるゲームであったことは確かだろう。現在、数多くのゲームが濫発されているが、プレイ時間を引き延ばすだけのつまらない仕掛けやトラップ、シナリオ分岐のゲームが非常に目立つ。つまり、「面白いゲーム」である条件は、今も昔も変わっていないということだ。
 技術的にも注目すべき点があった。『HYDLIDE』は、すべてオンロードで動作した。つまり、最初にテープ(当時はテープが全盛だった)なりフロッピーを読んで、ゲームが始まったらあとは一切プログラムを読まない(セーブ・ロードは別として)。いろいろ伝え聞くが、PC-8801版ではFDC(フロッピー・ディスク・コントローラ)上のメモリまで使ったとか。VRAMでメインメモリが盛大に取られてしまうPC-6001mkII版でもテープ一発読み込みで動作した。また、こんな話もある。『HYDLIDE』は基本的にマップは画面切り替えだが、X1版はPCGにキャラクタを定義していた(X1というマシンは、任意のキャラクタを文字と同じ扱いにできたため高速表示が可能だった)ため、スクロール・マップだった。当然、X1ユーザーは大いにこれを自慢したわけだが、他機種のユーザーも黙っていない。彼らの指摘したのは「スクロール・マップだとマッピングがしにくい」というものだった。マップがスクロールするのは今や当たり前だが、確かにそういう考え方もあるな、と納得した覚えがある。
 その『HYDLIDE』が、Windows上で動いている。画面、音楽ともにオリジナル版とアレンジ版の両方が用意され、昔を懐かしむ者はデジタル8色の目に痛いグラフィックとビープ音で、『HYDLIDE』を知らない者は今風の綺麗なグラフィックとアレンジBGMで、ゲームの形態の一分野を拓いたこの作品を遊んでほしい。そして、もし、「面白い」と思ったなら、なぜ面白いかを、どうすればもっと面白くなるかを、「つまらない」と思ったら、なぜつまらないかを、どうすれば面白くなるかを考え、ぜひメーカーに寄せてほしい。それらユーザーの声が、ゲーム業界を発展させる大きな力となる。
(マイコンBASICマガジン編集部)